兄が出征するとき 新川定琴 兄が出征するとき、 「兄さんが行くよ」、と隣の山田さんがわしを抱き上げて見せてくれたのを憶えている 小学校の縁で、雪があった。山田さんの雪に足がめりこんだものと思う 兄が表橋を行くのを憶えている わしを抱き上げて。兄さんが向う通るで、通るよっていって そんなものは、ちっちゃいで見えやせんで、向うが 見えなかった、雪があったで そして、抱き上げて。見せてくれたのを、憶えとる そりゃねえ、すならでみんな別れた ちょっと小高いところに平があって、そこへ登れるようになっとったんやろね あれや。ちょっと雪があったもんだで山田さんが、雪を踏み固めてなあ 踏み固めてくれて。ちょっと向うの方まで行って わしを抱き上げて。見してくれた。向いを通るで見てみよっていって隣の衆はみんなほとんど隣は帰ってきたんやね。兄貴だけは戦死した。 おこどの橋まで毎晩、母親が迎えに行った。今夜は来るか、今夜は来るかということで、 石油ランプをともしてわしを連れにして、迎えにいったんやけど。兄貴が外泊で帰って来てな、頭をかってくれたわ。 おふくろが急いで餅をつくってたべさせたことは憶えている
メモ帳がわりにアップしています。 岐阜県揖斐郡揖斐川町春日 美束 中山 上ケ流、下ケ流、川合で聞いたこと