ポチと熊を追う ②
冬は冬眠というけど、穴へ入っているだけで、寝てる時もあるけど、犬がそばへいって鳴く、犬がくいつきに行くわ。すると、ぐわっと怒って、犬をぼってくる。
犬も簡単にくいつかん。だあ、と逃げてく。熊の鼻と犬の鼻が離れたところ、犬が下がる。熊がぼってくる。
子がおるやつでは、節分の境に子を産むとしたものなんじゃ。熊はおんとめんと二匹産むでね。一年置きにしか産まんし。
1年は5、6貫目のやつを連れて歩く。その年は子を産まん。1年おきにしか産まん。鹿も1年おきに1つ。猪は豚と一緒、いくつでも。穴へ行って、犬をぼってくる。ぼってきかたによって、子のおる熊か。おすで一つかと言うことは、わかる。おすだけだったら、犬を遠いところへぼってくる。穴のなかに子のおる親は、ぼってきても2メートルぐらい。すぐに穴へ戻る。
熊をやったことがないもんと一緒に行くと、慌てる。熊はあわてて撃ったらあかん。弁当をおろして、一服しようと落ちつかせる。
わしは、犬が良いので勢子といって追い出しにいく。マチが待っている。熊が休んでたのを犬がかぎつけて鳴いた。きゃんきゃんきゃんと鳴き声が、熊に鳴く鳴き方じゃない。痛かったという鳴き方じゃ。
雪が血だらけ。犬が割かれてまった。熊は行きよる。遠いが、撃ったらね。するとね、熊が行く方から撃ったと思ったんじゃな。ちょうど、犬がやられてるところに戻って来た。
犬だかまいとるで撃てへんが、犬離いて、こっちの山に上がりかけた。冬でも葉のある木があるが、ケツだけ黒のが見えた。なんでもいいで、ばんと撃ちこんだ。そいつが当たってな。下へ落ちてきた。熊はまだ、死んどらん。その下は結構な淵があった。そこへ、熊がどぼーっと飛び込んだ。そこへ、頭をばーんと撃ったら、グダンといった。
上の方に待ちが二人おる。ケーツ吹いたら、上の方から慌てて返事きて、降りてきた。雪がまっかじゃろ。「なんじゃ」というで、猪に犬がやられてといったら、先生は、感づいとる。犬があんなにやられるのは熊しかいない。素人の人に渕になんぞおらんかと言ったら、「いかい、熊、浮いとるぞ」。熊、おれが撃ったんじゃ、渕から引き上げようと。重くて上がらんぞ。
犬がやられたところは毎年、熊が二つや三つおるんじゃ。十以上とったな。
伊吹山からみると、木もようけ生へとらん、壁やで。駐車場から見ると岩壁が見える、そこに熊がいる。ちょっと下向いたら見える。
ポチのこと
名前はポチ。おっかあが柴犬。馬喰やってた尾西の人いちすけさんが、秋田へ牛を買いに行って秋田犬の子をもらってきたので、いちすけさんに持って行って、かけてもらった。
赤ん坊の時から変わっておったわ。足は長い。これは、大きいなるわと。
猟期になって、おっかも5つになるまで、山鳥と狸はようやった。鹿もぼうのは追った。
でおっかと、ちんころを連れて熊を探しに行った。ちんころが足元でううううううう。おっかあは、上の方でよく熊の入る穴。足元におったちんころが、ふっと下の方に行き、鳴きかけた。雪をかっかっかと掘って鳴くんじゃ。
雪の中から匂いがしたんじゃな。上にいた親がどっと走った。犬どおしやで何かおるという。二人で掘りかけた。熊がおるやわと、棒で雪を掘って、そしたら、中におって。穴が深くて、撃った。おっかあとちんころ二匹で谷にすべっていた。熊は谷からよう上がらんで。そしたら、ちっとおもちゃにせなならんなと見とったら、おっかあと二人でくわえたり、離いたりしておった。それでかんかんに覚えてまった。
ぽちは、熊は三千メーターぐらいのところでも知っておった。わしは、あきれてまった。
鼻をこう振って。風が吹くと匂いがする。何か風がくるなと、すると、だあだあだあだあと洞をずっと上がっていく、風が具合ようくると上がっていって、風がそれると、匂いが来ないようになる。すると、匂いがないので、あちこち歩いて、匂いのするところ探しとるわ。飛び上がったりして。
あんなことをやるのはまず熊じゃで。犬の行く跡をくっついて。そしたら、風がふうと。鳴きかけた。行ったら、大きな岩の下に、冬でも花あるげな青い枝が大きな岩の下に、でんとあった。これは熊がおるわ。寝床をつくろうとしたが、あんまり青いでつくらなんだなと。
そしたら、犬はもうすぐ横の方へ行って鳴きかけた。こんどはおる鳴き方だ。いったら、だんこうがあって、下は甕やで。だんこうしかないんやこれは上から行くしかないな、と上から行って。犬をぼって、頭だしたら、頭撃とうと。なかなか頭を出さんじゃ。しゃあないで、犬のうしろにちょっとしただんこうがあり、そこへ飛び降りた。そしたら、目の前に頭。ちょっと火をつけて撃ったら、終わりや。
頭一発。熊は頭撃ってないと安いの。商人は、胆のうがほとんどやで。弾の傷があるとあかんで、傷がある弾のあとの血をぬぐってみるわ。にごないか。苦ければ胆のうがあかん。ねぶってみるわ。
熊は雪のあるところは熊はよう滑る。熊は足が短くて横ひらたい。仰向けにしたら、熊はよう滑るんじゃ。下顎の牙をくくると抜けせんのや。
雪のあるうちは楽じゃ。雪がないところはひっぱたら毛が痛む。負わならん。負うものがないと藤を切って、藤で負うんじゃ。肩が痛い。
あんまり大きいと置いておいて、家に帰ってセタもって、カマスか俵も持って、どすんと入れて。前足と後ろ足をくくってまって。