火事
火事といえば、おじいのおじいが子供の時だった。150年ばか前。その時分は全部葛屋じゃで、川合が火元で。
博打が流行って、その時分でも博打は禁じられておったんじゃな、そんで、倉の谷のところで小屋があって、そこに隠れて博打をうったんじゃ、そしたら火事になったで、博打うちがたっと来て、何やかも荷物を出してくれたという話をしたがな。
川合が火元で昔の茅の屋根やで、火事になると火事風という風が吹く。そりゃ、まあ、酸素が燃えるで、酸素がないとこへ新しい酸素がどばっとくるので、うおーっとなるんだな。火事になったら必ず風が吹く。風が吹いて、茅のたばに火が付く。
お宮のそばに、へいごろうというお大臣の家があって、そこの屋根に茅の燃えた束が乗った。茅で火がつく。その火が一面、広がった。一軒だけ、屋根が瓦で葺いてあった。そのうちだけは、ツマだけがこげても屋根の茅の束がのっても、火がつかなかった。
藤原正身さん