うりぼうをとりそこねた
日が暮れて雨で雪が重うなると炭竃の屋根が傷むとあかんで、屋根の雪をずぼっとはねておかなきゃいかんと、思い出して、竃にいったんじゃ。
たかあたり
カーバイトのランプがあるで日が暮れていても危のうない。狸が便所場へきていて、冬は食うものないで、便所場へくるんだ。 狸が高い時分じゃ。明日は雪が降ると。跡が消えてまう。いま、見てこなあかんと。 しばらく行ったら、ふっとしたとこに、狸の穴じゃないとこに、犬がくわえた。やれやれ狸を拾ったわい、と思って。帰ってこうと思って、ちょっと出てったら、犬が二人かかって鳴くやろ。狸はくわえてまったんやで、それがわんわんわんわん鳴くやろ。
なんやと見ておったら、黒いかたまりがもにゃももにゃもにゃもにゃと。猪や。
いのししを二つかかって、けつくわえたり、いのししは真下へ降りてくる。こりゃうまいとこ、撃たなあかん。犬が加えとるうちは、犬が危ないで撃てん。犬と離れたら撃たなあかん。弾で頭撃たなあかん。
ちょっとしただんこうがあった。そこへ猪がぽんと降りる。離した。ししだけだんこう下へぼとんと落ちた。犬と離れたで、いま、撃たなあかんと真っ暗闇。ここらへんじゃないかと思ってばあんと撃っとった。そしたら、こんころんと回ったやろ。いよいよ当たったなあと思って。その下は谷じゃ。水あるで。谷までまわった。どこに当たったるが知らんが、晩に生き返って逃げるとあかん。腹だけ切っとらなあかん。鉈で腹をたちわって、腸ひきづり出して、谷に冷やかして。犬がべろべろなめる。血が出るので。背筋に当たっていた。
たかあたりという。これは、また生き返ることがある。
その後に、笹かりに行ったら、小さなうりんぼが四つばかり骨ばかあった。うりんぼはかてえて死んでまった。親だけ来とったんだ。親を撃ったときにここに来れば、うりんぼも拾えた。うりんぼだって4キロはある。結構な肉はある。
藤原正身 さん 聞き取り