北支はな、梅雨時期になると今日も明日も雨が降るんじゃて。北支で雨が降るとぬかるみになる。火山灰じゃろ。どぼどぼになる。難儀をしたなあ。あるけん。馬は使えんしな。馬はずぼずぼ。靴は土踏まずから前に厚こい皮がうってあるが、下にすいついてはげてまう。現役の時だ。山東省。北支はさぶいさぶい。敵は初めは共産軍ではない。蒋介石が相手だ。
弾はとんでくる。北支の山奥でも戦争はあった。山岳戦は、機関銃は馬がおるので、崖にいくと馬は危ないところ行くとよけいあわてる。落ちては死んだ。馬は日本から連れて行き、死ぬとロバをシナから挑発。ロバは小さいが、駄馬という、日本の木曽馬ぐらいのもの。それは鉄はくことはいらんし。
馬は死んだら埋ける。ほとんど崖から落ちて死んだ。日本の馬は場の弱いところに弱い。機関銃の馬は大きい馬ではない。小柄の馬。馬でも招集があった。挑発というのだけど、民家のを買い上げる。 馬に行儀もないで毎日、毎日、訓練。
わしも馬の訓練をやった。馬の訓練はえらい。落ちたときに鐙がかかってると、頭をひきづられて死んでまう。だから、裸馬だ。けつがいとうて。けつがすれて血が出る
藤原正身 さん